ビークインと私の半生 第一部 トイレで出会った女王様
はじめに
私はビークインに思いを寄せている。
美しさと格好良さの両立という面ではビークインに敵うポケモンはいないと思っている。しかもかわいい。ビークインしかかたん。おしむらくは対戦勢の目線で見た場合、環境に蔓延るポケモンたちでビークインが敵うのはむさ苦しい草の生えたゴリラだけというところである。
私がビークインを好きな理由は「女王」という立場や部下に指示を行い集団で戦う設定上の戦闘スタイル、かなり似ているジオングを筆頭にモビルアーマーのような重厚感に惹かれたから✨
といったことが挙げられるがそのどれもが後付けのように思える。何故なら、DP発売当時にクソガキだった自分が、何かを好きになることに理由なんて一々考えている程、理知的かつ詩的な感性を持っている訳がないからだ。子供の好きなんてものは大体が何となくであることを私は職歴上わかっているつもりだ。あくまでつもりなのは実際の子供らは自分の予想を常に大幅に上回るか下回るかばかりで中々手強い生き物だからである。こんな面白くて厄介な子供という生き物が私はキライだ。
ただ、中途半端に賢しい子供だった自分は照れ隠しとしてこれらの尤もらしい言い訳を用意した。何ともまあ微笑ましい話ではあるが数十年たった今もその理由を引き続き言い訳に用いているのは少々笑えないことである。年齢ばかり嵩む一方でいつまでも悪い意味で子供の頃と本質が変わらないのが私が私自身を嫌いな所以だ。
また、当怪文書は私の過去犯してきた過ちを懺悔する場所であり、今まで書いてきた3桁構築紹介とは違ってビークインやそれらを取り巻く環境を下手に擁護せず、客観的な観点からボコボコに叩くこともあることは最初に断っておく必要がある。
私はまがいなりにもギリ対戦勢と呼べるくらいの戦績を取っていた(時期もある)のでビークインを擁護するのはどう足掻いても無茶があるし、自分が戦ってきた方、今現在戦っている方に対しても失礼であると考えているのでその辺はご了承頂きたい。
ビークインを叩く回は事前に注意書きをするので
一般的な意味でのビークイン好きは閲覧を控えることを推奨させて頂く。そしてどうかそのまま絶対対戦でビークインを使おうとはしないで欲しい。
ビークインを対戦目線で検索するとそのうち高確率で私の構築記事がヒットしてしまうらしいのだ。二度とこんなところに戻ってこない為にも楽しくランクマを遊ぶためにもビークインを使おうとなんて絶対決してどんなことがあっても思ってはならない。深い悲しみに囚われた哀れな犠牲者を出させないことが私に出来る最大限の罪滅ぼしである。
前置きはこれくらい。私は前置きの長い文章が嫌いだが、この長い前置きが霞む程、全体の本文がクソ長いので大した問題ではないだろう。一応、今みたいに話の主題から逸れた書きたいから書いただけの文章は青文字で表示しておくのでビークインについてだけ知りたい方は読み飛ばして頂いて構わない。
第一部 トイレで出会った女王様
攻略中に甘い香りのする木から虫を乱獲していた私はミツハニーの♀を入手することが出来ていた。赤いおでこがキュートなこのポケモンとの出会いが私の人生を狂わせることになる。
「嘘乙wwwそんな面倒なことこどもがするかよwww」というコメントが脳内をよぎったので私が虫好きであることやその理由を書かせて頂く。
私の虫好きは遠い昔、虫取り少年であった父との虫取りや半ば強制的にやらされていたムシキングに由来する。私は他のクソガキよりもずっとムシバトルが強かった。それもその筈、ショボい負け方をしたら殴られたりしていた……ような記憶もあるが定かではない。ネチネチ説教はされていたので英才教育(虫)を受けていたことには間違いない。
軍隊のような厳しい訓練はムシバトルの練度だけでなく、私の心を荒ませ、狡猾さを開花させた。邪悪なクソガキであった私は他の善良なクソガキどもを巧みなジャンケン捌きで出し抜き続けた結果、ムシキングに関しては都大会のベスト8だかに入るくらいの実力を持つに至る。
当時、都会の男児でムシキングをやっていない子は殆どいなかった。なんなら女子でも結構やっていたので競技人口から見た倍率の高さで言えばこの実績は名門大学すら余裕でパスできるレベルのものだが生憎、この実績が未来で役に立った記憶もあんまり無い。将来的にみれば無駄なことに随分とまぁ時間とお金と体力を費やしたものである。ここまで頑張ったこに履歴書にムシキングの文字を書けないのは何とも世知辛い話である。
ちなみにハスタートノコギリクワガタを使って大会優勝したり、どっかのイベントで200虫相手にハスノコで三連勝を決めて(舐めプではなく200ムシが入ったケースを家に忘れて制限大会用のカードしか手元になかった)イベント限定のマンディを手に入れた。
私は恐らく、というか実績だけならほぼ間違いなく世界最強のハスタートノコギリ使いとなったのだ。この「マイナーなもので世界最強になる」という考え方は実力がそこそこあっても世界一には届かない私が、少しでも自分を大きく見せる為に編み出した「見栄」である。このコスい考え方は今でも続いている。誰も望んで無いイタい子供からイタイ大人へのステップアップ。若気の至りはあと何年続くのだろうか。
お気づきだろうが、ここまでの文章殆どが蛇足である。だが、私は自慢すること、もとい褒めてもらうことが好きなのでどうか許してほしい。というかビークイン5割くらい選出して3桁取った時も対して褒められた覚えないんだけど正直カバギャラ軸で200位取るよりずっと大変だったのにその時の方が賞賛浴びた気がするんだけどこれマジでなんなのどうなってるのか誰か説明して欲しいのだけど
そんな具合で今でこそクソめんどいシステムとしか思わないが、あまいかおりのする木にむしポケモン(例外あり)が集まってくるのは虫好きな私の心を鷲掴みにしていた。そうやって虫を取っているうちにミツハニーの♀も鷲掴みにしていた。
当時の私は俗に言うクソガキではあるが、ワガママを言うことの少ないような、所謂いい子ちゃんでもあった為、ゲームをする時間は毎日決められたものを守っていた。それはのめり込むようにハマっていたダイヤモンドでも同じことである。ただ、このビークインの存在が私に親との約束を破り、嘘をついた不良者としての烙印を押すことになる。
ビークインの存在については攻略本伝に知っており、その進化レベルも私は把握していた。時計を見るといつもなら寝る時間。「そろそろ寝るよー」と親の声。手元にはレベル20のミツハニー。寒い日だと言うのに冷たい汗が背筋を伝う。
考えるより前に私は叫んだ。
「ト イ レ !」
パジャマにポケットがなかったので袖の下に無理矢理DSを隠し、親の返事も待たずに狭い家の中を走り出す私。年端もいかぬクソガキがトイレに年端もいかぬミツハニー(♀)を連れ込む事案が発生。狭い便所の中、ヤることと言ったらレから始まるアレしかない。
レべリングだ。
しかし焦りに焦ってかかぜおこしを撃つ場面で間違えてあまいかおりを押したり、ちょうどいい狩場が分からず非効率なコイキング狩りを始めようとする始末。親から「遅すぎる!」と声が聞こえた辺りでギブアップ、勿体ない症の私でも流石に危機感を覚え、虎の子ふしぎなアメを投与し進化が始まる。はやくして欲しいような、ずっと眺めて待っていたいようなこの時の焦りと高揚感は今でも覚えている。
「びぷびぷび!」
特徴的な鳴き声と独特な動きをする女王様をトイレで汗ダラッダラで食い入るように眺める私。いろんな意味で凄まじいプレッシャーを受けたファーストコンタクトであった。この時の私は側からみれば私はただの変態だったのは言うまでもない。
「さっきからカチカチなってるの気づいてるからね!早く寝なさい!」
聞こえる親の怒号。
ダイパのレポートはおっそいことで有名だがこの時は平時の何倍も遅く感じた。言うまでもなく、寝る前のトイレというデイリータスクを達成することなく、急いで飛び出した私明日からビークインを使うことへの楽しみとじわじわ攻めてくる尿意で悶々としながら夜を過ごすのであった。これが私とビークインとの出会いである。
第一部完。
ビークインのとくせいがプレッシャーの理由は世界で私だけが知っている。